hunting狩猟とは(第十九話)
核心と確信に導かれ(上)

ある出猟日での身近な情報と折々の体感だけを元に 自問自答と独言の中で

読みと予感に導かれて行く様を細かく綴ってみます   2008.11.23again oncemore

よし!上の林道に回りこんだ勢子は 例え連絡が付かずとも打ち合わせ通り一気に攻め下るに

違いない 奥の枝谷には信頼置けるベテランに向かって貰った 本流の谷へと落ちたモノは

要所三箇所の待ちでカバーは充分だ 問題になるのがその反対側で 此れまでの手法では

やや離れた谷の待ちまで野獣の逃走ルートは幾つかに割れる 固めるのが自分ひとりでは

ちと手薄に成ってしまう この際包囲網を谷一本内側に狭めるとし そう目の前に駆け下る

ガレ沢で止める作戦で行くしか無いか 今立つ本流から眺めてもどんな様相で有るかさえも

窺えないこの沢は 山に詳しい地元の人でさえ名前も知られていない様だ  思い出した!

この沢は一度だけ登った事が有る そうあの時は残り時間が迫り速い勝負と囲みを狭め

この沢で止めんと登り出し 途中でタイムオーバーGOを掛けた 少しでも視界を得んとばかり

沢の切れ込み方向へと横駆け出た場所が又とんでもない垂直の岩場で 雨が有れば直瀑の

滝と変貌立ちはだかる場所も 渇水気味の冬場只壁として立ちはだかっていたのだった

既に其処を動くことが出来無い事で

滝下の渡りをライフルで迎えんとして

座る私を嘲笑うかの様に滝上を抜け

悔しい思いをさせられた記憶


一抱え程の杉山は手入れも行き届き

見通しの邪魔とは成らぬのだが

何せ椿等の下生えが密生し 丁度

野獣の身体を覆い隠してしまう

良く見ると僅かな痕跡 ワリはその

殆どが下へと向いており きっと沢の

切れ込みのきつさに ガレ場の底を

嫌って渡る事は少ないのだろうか?

あの時の岩場 滝の位置は此処から

では確認出来そうにないし 椿を

鷲づかみにすると身を上げ掻き分け

一気に高さを稼いでいくきっと何時か

何処かで明確に横切るワリの痕跡に

出遭う筈 其処を右手追い山方面に

辿ればきっと滝の頭に出る 其処が

本待ちとして良いだろう

八合目辺りの林道から上を望む

林道から現場方向を見下ろして
 
荒れた呼吸を宥めながら聞き耳を立て周囲を窺う 目指してる場所はこの沢の向かい側だらり

太い尾根の頂に立つ松の木で 其の尾根の高み其処は見晴らしの良い山城の天守閣と云った

環境にある 奴等は居心地良い其の原で横たわりまどろんでるに違いない 先程から盛んに

コールする勢子の呼び出しに応えて居ない ハナからそう決めて前進して居る 奴等は其処に

寝ているのだから 振り返り本流の向こう山を望むと既に高度は随分稼いだ筈で 幾らもせず

この山の八合目辺りに切り開かれた工事中の林道へ出てしまう 植生が雑木に替わるあの

一帯がそうだと目安を付けた。

おっと!山仕事の作業道横手と見間違うような 良く踏み込まれるルートに出た 此れか?

此れが前回包囲網を破った獣道に違いない 右へと歩を向け追い山方面へ更に接近して行く

しかし何処で迎え撃つと云うのだ?もうちぃと見通し利く場所は無いか 棚状に刻まれたルート

急斜面の其の上も下も獣道は見当たらない 正に奴等にとり地獄待ちに成るだろう一本道だ

其処で初めてハンドマイクを覆い隠して 声を潜めGOを告げた

                                                 oozeki

hunting狩猟とは(第二十話)核心と確信に導かれ(下)へと続く